2017年04月06日

働き方改革で副業・兼業を推進する際の留意点(エッセンス 米田瑛紀さん)

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政府が推進する働き方改革。この中で議論の1つとなっているのが副業・兼業の推進だ。

先日、政府が発表した「働き方改革実行計画」の中でも副業・兼業は、「希望する人は近年増加している一方で、これを認める企業は少ない」と現状の問題点を指摘しつつ、「認める方向で普及促進を図る」として、副業・兼業を推進する方針が改めて確認されている。

しかし、企業が単に副業・兼業を認めれば、それだけで従業員のモチベーションが上がり、労働生産性が向上して、働き方改革が実現するのかと言えば、そんな簡単な話ではない。

政府が副業・兼業を推進するにしても、それを採用する企業側には、それをどのようにして社内で運用させるかについて検討すべきことがありそうだ。

そこで今回は、プロ人材・幹部人材などの人材紹介事業を行っているエッセンス株式会社 代表取締役の米田瑛紀氏に副業・兼業を認める制度を導入する際のポイントについて話を聞いた。

ただ副業・兼業を認めるだけではダメな理由

米田氏は現状について次のように語った。

「確かに、副業・兼業を認めようという動きは広がっていますが、具体的に何をしたらいいか分からない企業が多いと思います」

「副業・兼業を就業規則に盛り込むだけでいいのでは?」という質問に対して米田氏は「ある日突然、『副業OK』と言われても、従業員は何をしていいのか分からない」として、そのままでは制度が活用されない可能性を指摘している。

確かに、急に副業・兼業が解禁されても、会社や自宅近くのコンビニやファミレスなどでアルバイトを見つけるのが関の山かもしれない。

「重要なことは、その個人が持っているスキルや価値を最大化させる方向で行うことです。『昼はマーケティング部で働き、夕方からは飲食店でアルバイト』の様な働き方は、その人のキャリアを活かしているとは言えません。また社会全体としても生産性の高い状態ではありません。」

ではどうしたらいいのか。

米田氏は従業員が副業・兼業に実際に至るまでに3つのステップを企業側が整備するべきだとしている。

ステップ1.自社での人材育成

「まず自社で活躍できる人材を育成するために社外体験ができる環境を作る必要があります。これは副業・兼業を認める以前のこととして取り組むべきことです。多くの大企業ではプロパーでその会社に入社し、その中の世界しか知らないような人材が多く見られます。そのような方に現状の職務と並走して、自社以外での活動を経験させる事で、ブレイクスルーを促す事は、人材育成の面で非常に効果が高いと考えております。」

米田氏の経営するエッセンスでは、上記のような企業での人材育成を支援する一環として、大企業の幹部をベンチャー企業へ「他社留学」させて、そこでの「修羅場経験」を通じて人材育成を行う新サービス「ナナサン」を展開している。

ステップ2.他社での業務活動

「優秀な社員であったとしても、そのスキルや能力が必ずしもその職場で活かしきれない場合があります。特に40代から50代前半の人材において顕著にみられる傾向ですが、これまで培ってきたスキルやノウハウが自社内よりも他社において活用できる場合があります。そのような場合に、人材を他社で社外活動をすることをお勧めしています。」

実はエッセンスでは、「マイスター」というサービスをトライアルで立ち上げて検証中であり、ある企業の人材を一定の期間、一定の頻度で、他社で業務として活動させる事業を行っている。

「例えば、50代前半の大手IT企業のAさんは、組み込み系のプログラミングにおいて高いスキルを持っていましたが、その会社ではその年齢ではマネージャー的な役割を求められていて、自身の持つITスキルを活かせる機会がありませんでした。」

「そこで当社の『マイスター』を通じて、Aさんは毎週火曜日にある中小企業に出社して、そのプログラミング技術の指導を行い、他の曜日は通常通り自社の職場に出社するということを行ってもらいました。」

このような「社外業務活動」では、人材の送り先の企業が送り出し手の企業に「業務委託料」を支払うことになる。

従って、その社員は籍を置く会社は変わらず、給与は籍のある会社から支払われている形なので副業・兼業と呼べる状態ではない。

しかし、この点について米田氏は、「重要なのは、このような『社外業務活動』を通じて、その社員が所属する企業以外の会社でも自身が活躍できるという実感を持てること」としている。これが次の副業・兼業だけでなく、新しいキャリアの開発につながっていくのだという。

いきなり副業・兼業に行くのではなく、まずは自身の経験や能力が外部においてどこまで通用するのかトライアルをすることが重要ということだ。

ステップ3.副業・兼業そしてプロ人材へ

「このようなステップを踏んで最終的には、自身の経験やスキル・能力を最大限に活かした副業・兼業にたどり着くことができるでしょう」

「また当社では、『プロパートナーズ』という高い専門性を持つ『プロ人材』を個人の活動として様々な企業に提供するサービスを行っていて、副業・兼業をする方は、このサービスに登録して活躍するということも可能になると思います。」

このようにして見ると、副業・兼業が実際の職場において活用されるためには、それを就業規則に盛り込めばいいという単純なものではなく、従業員の持つスキルや価値の最大化という視点で副業・兼業への道筋を企業側で用意しておくことが必要だと言えそうだ。

(終わり)


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