2017年07月04日

働き方改革と保育士問題(ウェルクス 石田浩幸さん)

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働き方改革を議論すると必ずと言っていいほど出てくる論点が待機児童問題だ。

6月9日に政府が発表した「骨太の方針2017」でも、子育てと仕事の両立を図る観点から待機児童の解消を重点課題の1つにあげている。

昨年2月の「保育園落ちた日本死ね」ブログ騒動が国会質問で取り上げられるなど、この問題の深刻さがクローズアップされたことはまだ記憶に新しい。

保育所を利用する我々一般市民の感覚だと、「もっと行政が頑張って、受け入れ可能な保育園を増やせばいいのに」と思いがちだ。

しかし、問題はそれほど単純ではないらしい。

このことを改めて知らせてくれたのが、先日、6月29日に開催された第17回ビズテリア・フォーラムでのあるプレゼンテーションだった。

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ウェルクス 石田浩幸氏が指摘する保育業界の課題

この日の登壇者の中で保育士問題について発表したのが、株式会社ウェルクスの石田浩幸氏。同社が運営する保育士向けのメディア「ほいくらいふ」の編集担当者だ。

石田氏によれば、全体の有効求人倍率は高まっている一方で保育士不足は依然解消されていないとして、「平成29年度末までに、6.9万人の保育士を増やす必要があります」とその緊急性を訴えている。

保育士不足によって保育園の整備が遅れ、その結果、待機児童問題が依然解消されない状態が続いているという構図の様だ。

原因は保育士の雇用環境

では、保育士不足の原因は何か。

石田氏はプレゼンテーションの中で、保育士への成り手が少ない原因として、次の3つを挙げている。

1.賃金
2.業務環境
3.人間関係

1つ目の「賃金」について石田氏は、「今年度から保育士給料が2%引き上げられることになりましたが、金額にするとわずか6000円です。民間企業との給与の差は月額11万円。まだまだ差は大きいです。」と保育士の給与水準が依然低いレベルにあることを指摘している。

さらに2つ目の「業務環境」については次のように述べている。

「労働時間の長さや休暇の取りにくさ、責任の重さなども課題です。正職員の5割が毎日9時間以上働き、また資格者の配置基準の人数ぎりぎりで運営している保育園も多く、体調不良でも休めないことも多い。」

このような賃金水準と労働環境の問題が相まって、現場での保育者同士の人間関係にまで支障をきたしているような構図に見える。

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社会全体の働き方改革に向けて

プレゼンテーションにおいて石田氏は、同社のメディア「ほいくらいふ」が保育士・幼稚園教諭、約200名に行ったアンケート調査結果を紹介してくれた。

この調査からも現場の声として、待遇改善を求める強い要望があることが伺い知れる。また、業務プロセスの見直しやITの活用などによる業務改革の必要性もありそうだ。

このような保育現場で起きている問題は、単に保育業界に留まることではないだろう。

先述の通り、保育士不足が待機児童問題を引き起こし、その結果、仕事と育児の両立を阻害することにつながっている。

従って、保育士の賃金や業務環境を改善することは、社会全体の働き方改革の成否につながっているのではないだろうか。

国の予算を見ると、毎年、高齢者向けの社会保障費には多額の予算が投じられているが、その一方で、少子化対策のような、子供や若者、現役世代といった層に対する予算は手薄感が否めない。

このようなシルバー民主主義と言われるような偏重を改め、保育士の待遇改善をはじめとする少子化対策に重点的な予算配置がなされることが急務だと言えよう。

(終わり)


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