2017年08月10日

働き方改革、成功の鍵は役割の明確化(みのり経営研究所 秋山健一郎 氏)

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政府は4日、第3次安倍晋三第3次改造内閣を発足させた。安倍首相は改造後の最初の記者会見において、「働き方改革はいよいよ実行の段階に移ります」と強調。秋の臨時国会では、働き方改革関連法案の審議が国会論戦の最大の焦点となる様子だ。

そんな中、先日開催した「働き方改革」共創ワークショップに登壇した、みのり経営研究所 代表の秋山健一郎氏は、同ワークショップのプレゼンテーション・セッションにおいて、政府や企業において進められている「働き方改革」に対して本質的な提言を行った。

制度の導入だけではうまくいかない

かねてより政府は「働き方改革」を成長戦略の中核と位置付けて強力に推進してきた。昨年9月に安倍総理を議長とする「働き方改革推進会議」を立ち上げ、10回の会合を行った後、今年3月に「働き方改革実行計画」が決定された。秋の臨時国会ではこの計画を具体化させるための関連法案が審議される予定だ。

このように政府による「働き方改革」は前進しているように見えるが、これに対して秋山氏は次の様に指摘している。

「働き方改革推進会議では9つの検討テーマを挙げて、それぞれに対しての対応策を示すなどしていますが、その多くは何らかの制度を導入するというもの。これだけでは働き方は良くなりません」

人事コンサルタントとしての長い経験を持つ秋山氏は、制度の導入だけで働き方が改善されることはないと言う。無理に新しい制度を入れようとすれば、改善より、むしろ現場に混乱をきたす可能性さえあるとしている。

秋山氏は「現場の管理職にしてみれば、『こんな忙しいのに、また新しい制度をいれるのか』と感じることが多いのではないでしょうか」と新制度に対する現場の感覚も紹介した。

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属人的な日本の人事

一方で、日本企業の人事にも「働き方改革」を阻害する要因があると秋山氏はいう。

「入社何年か、どんな学歴か、男性か女性か、そのような表面的な情報、画一的な情報だけで、人事評価や報酬を決めている例は少なくありません。」と多くの企業における人事の実態を紹介。

さらに、経営者や上司が社員や部下に対して行う人事評価は「あいつはよくやっている」というような属人的な感覚で行われている現状にも問題があると指摘した。

このように、多くの日本企業において人事制度は、経営を支える基盤として機能しているとは言い難い現状があるようだ。

働き方改革の本質は、Job(仕事)の明確化にある。

では、「働き方改革」を成功させるには何が必要なのだろうか。

秋山氏は、みのり経営研究所が掲げる人的資源マネジメントの全体像(みのりコンセプト)を示しながら、同社の考える「働き方改革」のポイントについて解説した。

はじめに企業理念と経営戦略があり、次にそれを実現していくための組織構造を作る。そして事業計画を策定して結果を出す。ここで結果を出す主体はもちろん社員である。

このような人的資源マネジメントの中で中核にあるのは「役割(Job)」だと秋山氏は強調する。

「何の仕事をするのかという『役割』を明確にすることが最も重要です。しかし、これができていない企業は少なくありません。」

つまり役割が不明確な企業が多いということだ。確かに考えてみると、日本の組織では、やるべき仕事や作業を具体化・明文化して共有するよりも、上司や先輩社員・同僚社員の仕事を見様見真似で習得していくケースが一般的なのかもしれない。

しかし、これだと、政府の「働き方改革実行計画」に挙げられているような施策がうまくいかないのではないだろうか。

例えばテレワークを考えてみよう。テレワークはIT機器や情報通信機器などを活用してオフィスから離れた場所での働き方を実現しよとする取り組みだが、秋山氏が主張するような「役割」が明確でなければ、離れた場所同士での仕事の連携は困難が予想される。

また、長時間労働の是正という取り組みを考えてみると、役割が明確でない中で労働時間だけを強制的に短くすれば、結局、こなせる仕事の絶対量が減るだけとなり、企業としての生産量や作業量は減少し、売り上げや収益にマイナスの影響を与えることは必至だ。

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このように考えていくと、秋山氏が主張するように、制度や仕組みを導入する前に、まず仕事が何であるのか、何の責任があるのかなど、役割を明確にして共有することが重要だと言えそうだ。

秋山氏は次のようにも述べている。

「政府も含め、世の中の働き方改革の議論は少し的外れな感じがしています。何のための働き方改革なのか。誰のための働き方改革なのか。これらを考えてみる必要があるでしょう。」

ニュースの報道などだけを追っていくと、一見、進んでいる様にも見える「働き方改革」ではあるが、一度、本質が何であるかを考え直してみる必要がありそうだ。

(終わり)


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