2017年10月06日

「管理しない経営」で働き方改革は成功する(ユナイトアンドグロウ 須田騎一朗さん)

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経営を英語に訳すとManagement(管理)やAdministration(統治)になると言われている。つまり管理や統治をすることが経営だとも言える。

しかし、これとは真逆の「管理しない経営」を標榜して事業を拡大させている経営者がいる。「シェアード社員」というユニークなサービスを提供するユナイトアンドグロウの代表、須田騎一朗氏だ。

先日開催された「働き方改革」共創ワークショップは同社のオフィスにて開催。須田氏も登壇し、同社の働き方改革の事例を紹介した。

須田騎一朗 「働き方改革」共創ワークショップ

IT専門人材のシェアリング・エコノミー

同社は都内の中堅・中小企業向けにIT部門の支援を行っているベンチャー企業。「シェアード社員」では、同社の社員が顧客企業を定期訪問。ヘルプデスクや社内システムの運用、システムの改編作業など、社内のITに関わる様々な業務を一手に引き受ける。場合によっては情報システムのグランドデザインを描いたり、経営会議への報告や提案まで担当することもあるという。

IT分野で専門的な知識や経験のある「シェアード社員」。そんな専門人材からのサポートを顧客企業は必要な時に必要なだけ受けることができるのが同サービスの特徴だ。「シェアード社員」の時間やスキル・ノウハウを複数の顧客企業がシェアできるという意味では、近年注目されているシェアリング・エコノミーのコンセプトとも合致している。

このサービスによって同社の業績は順調に拡大し、今期の売り上げは11億5千万円。今後も成長が期待されている。

管理しない経営で会社は成り立つのか

須田氏が「働き方改革」共創ワークショップでのプレゼンテーションにおいて最初に強調したのは「管理しない経営」。

150名いる社員の大半は普段「シェアード社員」として様々な企業で活躍している。社員が自社のオフィスにいることはほとんどない。

当初は社員ひとり一人の行動を管理しようとしたという。どの社員がいつ、どこで、どんな業務を行ったのか。

しかし須田氏は、自社のオフィスから離れて活動している社員の行動を管理しようとしても、そこには限界があることに気づく。

「いくら管理しようとしてもキリがないんです。監視カメラをつける訳にもいかないし。だったら思い切って社員を信じ、何も管理しないことにしようと。お客様が満足して、従業員もイキイキ働いているならそれでいいんじゃないかと」

しかし、ここで1つの疑問が湧く。

社員がバラバラに働いている状況で何も管理をしなかったら、会社として成り立つのだろうか?

目まぐるしい「転職体験」がモチベーションに

「当社には人材手配や営業開拓の専任担当者がいません。全員が『シェアード社員』としてお客様のオフィスで働きながら、スタッフの配置やお客様への提案などの業務も兼任しているんです」

つまり社員ひとり一人が営業活動を行い、提案・受注、サービス提供、プロジェクトの進捗管理など、全てをこなす。案件ごとの少人数チームによって業務が自己完結しているので社員を管理する必要もないという訳だ。

しかし、「そんな『自己完結』は社員にとって負担にならないのだろうか?」と新たな疑問が。

これに対して須田氏は「この仕事は、負担どころか、無茶苦茶面白いんですよ」と説明。

「何が面白いかというと、凄い勢いで転職と同じような職場体験ができること。例えば、昨年はブライダルの職場を経験。今年はコンサルティング会社で活躍。次はITベンチャーの社内IT担当。そんな目まぐるしい経験ができるのが『シェアード社員』です」

同社の社員は一つの会社に所属しながら次々と新しい職場体験ができることが魅力となり、モチベーションとなっている様だ。

須田騎一朗 「働き方改革」共創ワークショップ

顧客満足度アップの理由は自律人材

また須田氏は、「シェアード社員」がフレキシブルな働き方の実現にもつながっていると説明する。

顧客は「シェアード社員」の利用料を働いてもらった時間に連動して負担する。従って、より短い時間で作業を終えれば、顧客の費用負担はその分減り、また「シェアード社員」は余った時間を他の顧客のために使ったり、自身のプライベートの時間に充てることもできる。

「お客様の満足度の向上と社員のフレキシブルな働き方が両立する仕組なのです」

社員が自分自身の判断で、仕事内容や時間の使い方を工夫することで、お客様に今まで以上に喜んでもらい、それが結果として自身の働き方をフレキシブルにもしている。

経営者や上司が何の管理もすることなく、社員ひとり一人が高いモチベーションを持って、常にお客様満足の向上に向けて働いている姿は、自律人材そのものと言えるだろう。

企業文化こそが最大の強み

このように社員が意欲をもってサービス向上に取り組んでいる同社だが、須田氏はその強みは企業文化にあるとしている。

「社員同士が空気のように共有しているのが企業文化。これが最大の競争力だと考えています。社員が集まっている時の様子を見てもらえばそれが分かると思います。」

目には見えないが社員同士で共有されている価値観があるという。

例えば、次のようなものだ。

管理はしない。監視はしない。
数字は給料も含め、全部公開。
時間の管理は自分で行う。
ひとり一人の個性を大事にする。
社員全員で企業ミッションを意識する。
働きづらいことも喜んで楽しむ。
皆で助け合う。
等々。

このような価値観の共有が企業文化として醸成されている。

須田騎一朗

ボンド・グループで家族のような強固な組織に

実は、同社には「ボンド」というユニークな制度がある。全社員は社長も含め、無作為のくじ引きによって6~8名単位で構成される「ボンド・グループ」に所属している。

「ボンド」では定期的にメンバーが集まり、様々な問題を話し合う。時にはグループ単位で旅行に行ったりもする。

「ボンド」での話は守秘義務が原則。だからどんなことでも気軽に話ができる。いわば家族のような存在だ。

このような強い信頼感でつながった強固な組織があることで、一見、別々の職場でバラバラに働いている社員同士が、同じ価値観、同じ目標に向かって進むことができるのだという。

本当の働き方改革とは

政府の進めている「働き方改革」の目標は、その改革によって組織の生産性が向上すること。しかし世の中で実践されている多くの事例は、長時間労働の削減、テレワークの導入、派遣社員の待遇改善等々、どれも小手先の対策というイメージが拭えない。

今回の須田氏のプレゼンテーションを見て気づかされたのは働き方改革の本質だ。

同社のように、社員ひとり一人の意識が根本的に変わり自律社員として行動しつつ、同時に、企業の掲げるビジョンやミッションを共有し、同じ方向に向かって取り組みを進めなければ、本当の意味での働き方改革にはならないのではないだろうか。

(終わり)


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